※PV4を見て捏造。ハッキリ言って重いです。











「うわあああああ!!」

 真っ黒な波動が、何もかもを破壊しつくす風となって、僕たちは吹き飛ばされた。
 先程の雷撃が襲い掛かったばかりの僕らは、激しい痛みに呻く。

「す、すごい力です……」
「このままじゃ、殺されてしまいます」

 僕は唇を噛んだ。
 あと一発、攻撃を受けたら、みんながやられてしまう。
 もう二度と、立ち上がれなくなってしまう。

 どうしたら良いんだ。
 どうしたら……。
 ……!




 希望は白光に託された



 方法を模索する頭に浮かんだのは、白き女性の精霊の姿。

 彼女の力を使うんだ!


 がくがくと震える足。
 痛みを訴える全身。

 それでも、とにかく立ち上がり、そして叫ぶ。

「×××××! 力を貸して!
 みんなを守れる力を!!」

 僕はありったけの声を上げて、手を宙に掲げて、彼女を呼んだ。

 地に伏して、苦悶の声を上げていたミラやアルヴィン、レイアとエリーゼ、ローエンは目を見開く。
 時折、崩れ落ちそうになる体を叱咤して、全身を小刻みに震わせながら立ち上がるのは、アルヴィン
とミラだった。

「ジュード止めろ!」
「ジュード!
 ×××××を呼んだら、君は……!!」



 ×××××を呼ぶ事は則ち、僕の体や意識は×××××に奪われ、人や精霊を破滅に導く精霊として
覚醒してしまうこと。



 破壊の力であっても構わない。
 今はただ、みんなを、精霊達を、リーゼ・マクシアの人々を守りたい。


 万に一つ、×××××が僕の目で世界を見て、人間や精霊にもう一度チャンスを与える事が出来るのであ
れば、ミラ達を助けてくれるだろう。

 しかし、×××××がまだ人間を、精霊を恨んでいるのなら、全てを破壊する者として、敵味方を攻撃し
尽くす。


 ……後者の線が濃厚だろう。
 何しろ彼女は、人間や精霊に絶望しているのだから。



「みんな。
 もしも×××××が覚醒して、無差別に攻撃を始めたら」

 僕を殺して。
 僕を止めて。

 みんなに残酷な言葉を告げる。
 みんなの顔は見なかった。
 見てしまったら、この決心が揺らいでしまうから。

 誰も何も言わなかった。
 痛みと驚きで、何も反応できないのだろう。



 次の雷撃が襲い掛かってきた。
 僕やみんなに届く寸前で、空から白い光が降り注ぎ、雷撃が拡散していく。
 ×××××の光だ。

 その光の中で、柔らかい女性の声が耳に届く。

『……わかりました。あなたの大切な者全てを守りましょう。
 あなたの体と心を引き換えに』



 『あなたの体と心を引き換えに』って、なんて残酷なのだろう。

 だけど、僕には後悔はなかった。
 みんなを守れるのであれば、僕の体と心を奪われても構わない。



「消えちゃダメ!!ジュードオォォォ!!!」


 レイアの泣き叫ぶ声。
 みんなの、僕を呼ぶ声。


 口を開く事もなく、光に同化していくように、静かに瞳を閉じる。

 聞こえていたみんなの声が、段々小さくなり、やがて消えていった。






 何も聞こえない光の奔流の中で、ジュードの中から感情や思い出、何もかもが抜け出ていく。

 抜け殻になったその姿に、白髪の女は近寄り、そっと抱きしめた。

 その瞬間、抜け殻の少年と、白髪の女が融合して。



 少年は、精霊になった。






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