※女装ネタがありますので、苦手な人はバック。
大食い大会と可憐な美少女
「第18回?」
「ケーキ大食い大会?」
レイアから差し出されたチラシを凝視して、ミラとジュードは首をかしげた。
「そう!
今日、お昼からコロセウムで開催されるんだって!
みんなで出ようよ!!」
「まったく、レイアはこういう勝負事大好きなんだから〜……」
右の人差し指をこめかみに当てて、ため息をつくジュード。
「だが、女の子は4人で一チーム組んで、エントリーするって書いてるぞ?」
レイアからチラシを受け取り、眉を寄せるミラ。
「女の子は、私達しかいないですよ?」
首を傾げるエリーゼ。
「何言ってるの二人とも。
ちゃんとここに一人いるじゃない!」
レイアが目を光らせた先にいたのはジュード。
「あっ! 僕、用事を思い出」
レイアの視線に気づき、そそくさと部屋を出ようとするジュードだが、
「ちょい待ち!」
あっさり捕まってしまった。
「僕は男だよ!
この大食い大会に出られないから!!」
「そうだぞレイア。
いくらなんでも無理があるぞ」
「ふっふっふ! 甘いわよミラ!
ジュードって、女の子に間違われてもおかしくないほどの可愛い顔してるんだから、女装しても違和
感ないわ」
「可愛い顔してるって、気にしてるのに……」
何かがグサッと心に刺さり、ホロリと涙目のジュード。
少年とはいえ、男の矜持が傷ついた。
「その証拠の写真は、こっちら!」
そこには、ジュードの寝顔。
しかし違うのは、仄かにメイクが施されていて、服も白いシャツに、いつもの黒い服の代わりに、胸
元にリボンをあしらった可愛らしい水色の服が着せられていた。
まさに、眠れる美少女の寝顔である。
おぉっ!と驚きの声を上げるミラとエリーゼ、ティポと対照的に、
「いつの間に!?」
ジュードの驚きの声が上がる。
「うむ、これなら女性にさせても違和感ないな」
寝顔の写真を見つめ、納得というように頷くミラ。
「いやいや、納得しないでよミラ!
エリーゼ! ティポも何か」
「言ってよ」という前に、エリーゼとティポは期待の眼差し。
「一緒に……出ましょう……」
「ジュード君……」
「う……」
か弱き少女とぬいぐるみのダブル上目遣い攻撃に、思わず狼狽。
ジュードが少女と人形の上目遣いで固まっている間、レイアが「うん! あった!」とバッグから取
り出したのは、明らかに女性用の水色のワンピース。
しかも、どこからか取り出したかわからない、黒髪の長髪ウィッグ付き。
「さぁ、お着替えタイムよ!
ジュードちゃん!」
満面の笑みを浮かべて迫るレイア。
「ちょ、ちょっと!! レイア怖いって!!」
避難しようと部屋の扉を開けようとしたが、がちゃがちゃと音が鳴っただけで、開かない。
「ジュード、ここは諦めて潔く女になれ」
ミラの手に、部屋の鍵。
退路を絶たれてしまった。
「いやだああああああああ!!」
真昼間の宿屋に、青少年の悲鳴が上がった。
パン、パンと白煙が空で弾ける。
街の中央にあるコロセウムのステージの上で、
「いよいよ始まりました! 第18回ケーキ大食い大会!!
本日も晴天に恵まれた中」
と男性が気合を入れた司会をする。
「いよいよですね」
「あぁ、楽しみだな」
「絶対優勝するんだからね!」
ミラとエリーゼは顔を見合わせていて、レイアは拳を突き上げて燃えている。
そんな彼女達の雰囲気とは間逆に。
「僕、もう帰りたい……」
艶やかな黒の長髪に、水色のワンピースを着た可憐な美少女は、一人涙していた。
その後、大食い大会はミラの奮闘とレイアの甘いもの好きの甲斐あってか、優勝は出来なかったもの
の、準優勝として、景品をもらってしまった。
その景品というのは、街の特産品の栗を使ったモンブラン15個で、みんなで美味しく頂きました。
「な〜るほど。
レイア達に捕まって、女の子に仕立て上げられて、ケーキ大食い大会に出場したというわけだ」
得物を丁寧に手入れをしながら、「そりゃあ災難だったな」と笑いをかみ殺して言うアルヴィン。
「結局、準優勝だったけど、もう二度とこんな格好はしたくない……」
ジュードは肩を落とした。
ちなみに今ジュードが着ているのは、先ほどの水色の女性用のワンピースである。
大会終わった後、そろそろ着替えたいから服を返して欲しいと頼んだのだが、レイアに「可愛いから
だ・め☆ 明日返すから」と満面の笑みで却下されてしまったのだ。
「女性陣からすごく好評だったみたいだもんな。ミラ様も譲ちゃんも「今度はメイド服とかどうだ」と
か話してたからな」
「勘弁してよ〜……」
「まっ、これはこれでそそられるな」
「……えっ?」
ニマニマと笑ってにじり寄るアルヴィンに、ジュードは嫌な予感を覚え、逃げようと後ずさる。
しかし、
「うわっ!」
長いスカートの裾を踏み、後ろに倒れるジュード。
背中に、ベッドの柔らかい感触を感じる間もなく、
「せっかくの良い格好なんだから、楽しもうぜ」
とアルヴィンが上から見下ろし、ワンピースに手をかけた。
「うわあああああああ!!」
今度は夜の宿屋。
その一室で青少年の悲鳴が上がった。
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