3年間。
 あたしにとっては辛くも、初めて「充実」という言葉をくれた年月だった。
 あたしには2人の姉がいて、その姉たちに甘えてばかりいた3年前。

 そして今日は、甘えてばかりいて、何も出来なかった自分との決別の日。

「大丈夫? ……」
 この旅芸人で兄的存在のラクルが、あたしの緊張をほぐそうと声をかけてきた。
 ……。これがあたしの名前。
「うん、大丈夫!
 お姉ちゃん達が見に来てくれてるから!」
 あたしはそう返事したけど、内心は胸の鼓動が早鐘を鳴らしている。今にも口から飛び
出しそうだ。
「それに約束してるんだ」
 この、あたしにとって初メインの舞台での、お姉ちゃん達との約束――この舞台で、前
までの自分と決別する事を。
「すげえ人だぜ。もう満員になっちまった」
 この一座のムードメーカーで、ラクルと同い年のクレイスがはしゃぐ。
 このパフォーマンスは、テントではなく、外で行われるのだ。
 椅子が何十脚もある場面を何度も見てきているけれど、それがもう満員、しかも人がび
っちりといる。
 そのプレッシャーが、あたしの心臓をゴマのように縮ませた。
 そして不意に、姉達との大切な宝物である、三つの石の首飾りをぎゅっと握り締める。

 ――大丈夫。あたしがこれで怯えていたら、おねえちゃん達が心配する。

「これより、ラクフェニア一座、開演いたします!」
 ラクルが放送をかける。
 舞台が、遂に始まった。



 ラクフェニア一座のパフォーマンスは、拍手と歓喜の声で終わった。
 まだ足がガタガタしている。
 あたしのパフォーマンスは、色とりどりの玉を投げて、最後はその玉から紙ふぶきとと
もに、小さな花束を飛ばし、見に来た観客達まで届けるというものだ。
 練習中、成功したためしのない最後の花束が、今回が初めて成功に収めた。
「やったね! ……ちゃん!」
 この一座の母的存在のミッシェンが肩を叩く。
「……、お客さん来てるよ」
 クレイスが呼んでいる。
「お客さん?」
 あたしは楽屋の裏口から出た。
 そこで待っていたのは、

花束と、温かい笑顔。
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